2回以上流産や死産を繰り返して子どもを持てない状態を不育症といいます。
3回以上流産を繰り返す習慣流産は、主に夫婦の染色体異常・子宮形態異常・甲状腺異常・凝固異常・母体の高齢年齢の5つがリスク要因となると知られています。
当クリニックでは詳しく検査を行って習慣流産のリスク要因を突きとめ、ホルモン補充療法、抗凝固療法などを実施しています。特に、免疫失調による習慣流産には夫リンパ球免疫療法をするという選択肢もあります。
※不育症治療は藤沢本院で行います。
凝固異常(血栓のできやすい体質)が見られる方には、妊娠成立を確認できればすぐに抗凝固薬であるヘパリン注射を行います。
【リスク・副作用】
注射した場所が赤くなる、かゆくなる、腫れる、硬くなるなどのほか、血小板減少などが生じることがあります。
膠原病に似た疾患をもつ方やその関連因子が陽性である方には、妊娠が継続できるようにアスピリン、ステロイド、柴苓湯などを使用してリスクを低減させます。
検査をしても習慣流産の原因がわからない場合、免疫異常が原因となっている可能性があります。一般的に、母体は胎児に対して免疫機能が働かないようにできているのですが、胎児に対しても免疫機能が働き胎児を排除してしまうケースがあるのです。
そのようなときには、感染症のリスクのない夫の血液中からリンパ球を抽出し、妻の皮内に注射する免疫療法を行います。治療にかかる期間はおよそ4ヶ月で、治療効果を確かめてから妊娠を許可します。
<夫リンパ球免疫療法とは>
まだ「習慣流産」という言葉もないような1980年代、流産を防ぐ方法のひとつとして始まりました。治療の効果の是非をめぐって研究者が争っていましたが、原因がわからない習慣流産で、この治療を経た妊娠の成功率は70%といわれています。ただし、この数字は本来適応ではない患者のデータも含まれている数値であり、本当に適応すべき患者のみに治療した場合、妊娠継続できる確率はおよそ90%になると推測されています。一方、この治療を受けなかったケースでは、妊娠継続できる確率が37%にとどまったと報告されています。
<治療方法>
夫から血液30mlを採取してリンパ球のみを選別し、妻の左右前腕に皮下注射します。3週ごとに計4回、妊娠した後にももう1回追加します。
夫リンパ球免疫療法を行っている医療機関は少なく、湘南エリアでは当クリニックのみです。
【リスク・副作用】
夫の血液を利用した治療法のため、夫が感染症に罹患している場合は同じ感染症にかかる可能性があります。また、使用する薬剤によって感染症にかかりやすくなったり、発熱や倦怠感、注射部位に発赤や硬結、掻痒感などが生じることがあります。